たかすオハナ牧場のストーリー

越前海岸から1キロほど山側に入ったこの集落は全11戸の小さな村です。うち空き家が2軒、独居老人世帯が4軒、人口は20人で、2010年時の40人から半減しました。

かつては全戸稲作農家でしたが高齢化で次々と離農し、今では全世帯が米作りをやめてしまいました。残されたのは耕作放棄田です。背丈を超す高さに生い茂る雑草は裏山から下りてきたイノシシの恰好の隠れ家。イノシシたちは昼は草むらに寝そべり夜になると集落の庭の中にまで侵入してきます。景観を損なうこともあり草刈りに挑むのですが、草は真夏の炎天下に成長の勢いを増します。その時季の草刈りは熱中症との命がけの闘いです。この耕作放棄地の雑草を何とかしようとヤギを試験飼育し始めました。

限界集落化からの脱出、
ただただ豊かな暮らしを取り戻すことから始まった。

愛くるしさでたちまち人気者になる山羊たち

2018 年のことです。山羊たちは草をきれいに食べてくれるばかりか、その愛くるしさでたちまち村の住民や村を訪れる人たちにも可愛がられる存在になりました。しかしヤギを飼うには耕作放棄地を柵囲いしなければなりません。それにはかなりの費用が必要です。ヤギではその費用を生むことができません。

「羊を飼うということ」

「そうだ、ヒツジを飼おう!」というアイデアが生まれました。生後 12 か月未満の子羊の肉はラム肉と呼ばれ、クセの無い美味しさには定評があります。「そのラム肉を生産して行こう。福井市内のレストランにも地元産のラム肉を使ってもらえる。

ゆくゆくは空き家を活用した村のレストランで牧場を訪れたお客様にラム肉のジンギスカン BBQを食べてもらおう。」その構想に賛同する仲間が少しずつ集まってきました。そうして牧場作りは進みだしたのです。2020年の春には全国の方々からクラウドファンディングで多額の支援金が寄せられて牧場のランドマークとなる素敵な畜舎が建ちました。

ヒツジやヤギとの触れ合いに訪れるお客様に美味しいコーヒーや軽食を楽んでもらいたいと 2021年春に牧場カフェもオープン。牧場とカフェに付けた「オハナ」という言葉は「家族」を意味するハワイ語です。過疎化も限界集落化も集落消滅もすべて家族が消えることです。通り抜ける道の無い行き止まりのこの村だからこそ、何も行動を起こさなければ人知れず消え去ってしまう運命です。牧場とレストランがにぎわえばそこで雇用が生まれます。「自然大好き、動物大好き」な若者を雇用し、村に住んでもらう。彼らは村で大好きな仕事をしながら家族を持ち子育てができる。その時点で村には存続の灯りが再び点灯していることでしょう。そんな「家族」の絆でつながることが OHANAという名前に込められた願いです。あふれる村の自然を心ゆくまで楽しんでください。可愛いヤギやヒツジとふれあってください。そしてぜひ私達村人やこの村と OHANA になってください。

たかすオハナ牧場 & café OHANA オーナー 藤井省三

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